『三語便覧』

「フランスコトバ」「ヲランダコトバ」「エゲレスコトバ」が引ける日仏英蘭単語集。松代藩士村上英俊が、1854年に草稿を書き上げ、江戸日本橋通二丁目須原屋伊八の書林から出版した。
村上英俊は、旅籠屋の出身で医者を志していたが、妹が信濃国松代藩主真田豊後守幸良の側室に迎えられた縁で1841年に松代に移る。藩主の側近佐久間象山と出会って親交を結んだ。彼の説く海防論に触発されてフランス語の学習に志をたてたがオランダ語のようにはいかない。困っている英俊を見た象山が藩の書庫から蘭仏辞書とフランス語の文典を出して力づけてくれた。彼はこの辞書と首っ引きでフランス語文典の訳読に挑戦した。その後、「フランスコトバ」にも相当の自信をつけた英俊は「エゲレスコトバ」にも挑戦し、この辞書を出版する運びとなった。

『英和・和英辞典の誕生−日欧言語文化交流史−』岩堀行宏著p148より
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