『和英語林集成』

日本で最初に刊行された本格的な和英辞典

アメリカ人宣教師J・Cヘボンが岸田吟香の協力を得て、1867年に刊行した。日本で最初に刊行された本格的な和英辞典である。
キリシタン版『日ポ辞書』、フランス版『ロドリゲス日本大文典』、メドハースト『じゃがたら字典』、ギュツラフ『約翰福音之伝』、ベッテルハイム『路可(るか)伝福音書』といったような典籍から日本語を学んだヘボンは、患者になったあらゆる階層の人々を生きた日本語の教師にして、彼らが話すあらゆる種類の「Colloquial Japanese」を収録して和英辞書の資料とした。『古事記』や『源平盛衰記』『平家物語』『東海道中膝栗毛』『日本外史』等からも語彙や用例を引用している。1864年の春、「銀広」と呼ばれる若者が目を患ってヘボンの患者になった。32歳の岸田吟香である。1866年秋、ヘボンは吟香の協力を得て、7年にわたる宿願であった和英辞典の草稿をようやくにしてまとめあげた。ヘボンは和英辞典を日本で印刷しようと開成所教授堀達之助に相談してみたが無理だとわかって、上海の美華書院「Presbyterian Mission Press」のガンブルに頼んだ。ブラウンのCOLLOQUIAL JAPANSEを印刷したところである。1866年10月、大事な原稿を携えたヘボンは、夫人クララと吟香を連れて上海へ旅立った。ヘボンと吟香は1867年に横浜へ戻り、横浜外人居留地38番館のヘボンの屋敷から刷り上った『和英語林集成』を発売した。日本で最初に刊行された本格的な和英辞典である。初版の発行部数は1200部。1部20両もしたという。

『英和・和英辞典の誕生−日欧言語文化交流史−』岩堀行宏著p275より
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