『附音挿図英和字彙』

挿絵入りの本格的な英和大字典

太陽暦の採用に踏み切った明治維新政府は、1872年12月3日を明治6年1月1日と制定して暦の上でも西欧先進諸国に足並みを揃えた。この年の1月、横浜の日就社から挿絵入りの本格的な英和大辞典『附音挿図英和字彙』が刊行された。香港在留の宣教師W・ロブシャイドの『大英華字典』にかなりの訳語を負った英和辞典の代表作である。編者は大村益次郎と佐久間象山に師事し、幕府の蕃書調所・開成所で洋学を講じた戸田采女正藩士子安鉄五郎と、長崎英語伝習所で英語を学び、江戸へ登って幕府洋学所の教壇に立ち、英語小通詞となって築地の海軍英語伝習所に招聘された柴田昌吉という2人の英学者。彼らは英国で出版されたジョン・オウグルヴィー原著の英語辞典を底本にしてロブシャイドの『大英華字典』から多くの訳語を借り、日本で最初の本格的なイラスト入り英和大辞典を編纂刊行した。

『英和・和英辞典の誕生−日欧言語文化交流史−』岩堀行宏著p. 201より
CLOSE