新共同訳ーカトリックとプロテスタントとの共同訳
カトリックとプロテスタントの共同訳への動き
1964年(昭和39)年世界教会指導者会議のドリーベルゲン宣言は、「あらゆる教会との協力によって原語に基づく共通のテキストが準備せられることを要望する」とした。
1966年聖書協会世界連盟の極東聖書翻訳者セミナーが日本で開催された。1968年には聖書協会世界連盟と教会一致推進事務局の間で「聖書共同訳についての標準原則」が成立した。
1969年「日本聖書翻訳研究会」「聖書訳語委員会」が発足した。
翻訳委員会の成立と『新約聖書共同訳』
1970年(昭和45)、日本の共同訳聖書可能性検討委員会(村田四郎参加)は「共同訳聖書は必要且つ可能である」答申し、これを受けて1972年6月共同訳聖書編集委員会をカトリックとプロテスタントの委員で開催し、改訳作業を開始し、明治学院からは吉田泰教授が参加した。
翻訳にあたっては、「イエス・キリスト」の名称や、固有名詞などの歴史的用法などに差があったが、「教会の伝統的用語に通じない一般大衆が易しく理解できること」を目標に翻訳をすすめ、底本は聖書協会世界連盟発行『ギリシア語新約聖書』の第三版を使い、こうして生まれた聖書が1978年9月発行の『新約聖書 共同訳』である。
『聖書 新共同訳』への発展
その後、共同訳内部の翻訳者、各種委員から出た1000件を超える改訂助言の検討により、「教会内の人々が納得し、かつ使うものを作る」方向に転換し、すでに訳出されていた共同訳新約聖書の訳文も変えて1987年に『聖書 新共同訳』を出版した。旧約聖書は『ビブリア・ヘブライカ・シュトットガルテンシア』、新約聖書は聖書協会世界連盟発行『ギリシア語新約聖書』修正第三版、旧約聖書続編はゲッティンゲン研究所『ギリシア語旧約聖書』を底本とした。
これは、カトリックとプロテスタントの聖書学者たちが、実際の翻訳を進める中で見解に決定的な差や障壁がほとんどないことを経験し「教会のため、また教会外の大衆のための聖書」として翻訳できた大きな成果といえよう。旧約聖書もカトリックには、プロテスタントの聖書にはない外典があったが、これも収録され用語解説も付けられた。
『聖書 新共同訳』は1987年に刊行され、現在広く使われている。